開館記念展(後期)
「開館記念展」によせて
神戸は海と山の豊かな自然に恵まれ、古くから歌に詠まれ、源平の史跡など多くの文化遺産が存在している街です。その神戸に、BBプラザ美術館が、株式会社シマブンコーポレーションの創業100周年記念事業の一環として2009年7月に開館いたしました。
今回の展覧会では、当館コレクションより日本を代表する近・現代の日本画家、洋画家の作品を始め、フランスの巨匠たちによる絵画、版画、彫刻作品を展示しております。
パリに魅せられた画家たち
印 象派の画家ルノワールが『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』(1876年)を描いた頃のモンマルトルは、幾つもの風車が田園風の雰囲気を残しており、印象 派風の自然は残っていたようです。またユトリロが多く描いたパリの街角には、都市化の波を受けたこともあり、新築の建物が起立し、古き良きパリの味わいに も変化の兆をみせ始めていました。このようなパリの変遷は、1855年ナポレオン三世の命によって、セーヌ県知事オースマン男爵がパリの都市改革に着手し たことに起因します。
さて1900年にはピカソがスペインからパリへ、1913年には日本から藤田嗣治が芸術の都パリに憧れてやってきました。後年、この二人はエコール・ ド・パリの画家と呼称されますが、パリをめざしたのは彼ら芸術家ばかりではなく、モンマルトルあたりの観光客を見込んだホテルが軒を並べ始めます。そして 有名なアトリエ長屋があったモンマルトル界隈が劣悪な観光地と化してしまい、多くの画家はセーヌ川の左岸へ移り住むことになります。
その頃、セーヌ川周辺にカフェが続々とオープンし始め、そこからは、詩人アポリネールとマリー・ローランサンの恋が生まれ、マルケはセーヌ川沿いのアト リエからパリの街景を多く描きました。1905年から1910年の間には、絵画の世界で重要な二つの革命-フォーヴィスムとキュビスム-がパリを中心に起 こります。フォーヴィスムの運動に参加した画家たちのなかで、ヴラマンクほどフォーヴに生涯をかけた画家は稀でした。
当館の西洋絵画コレクションは数少ないですが、パリを中心とする近代化や社会状況の変化に対する画家たちの感受性を垣間見ることができます。
近代洋画の華麗なる展開
日本の近代洋画史は、幕末、明治からヨーロッパで生まれた絵画の概念と油絵の技法を摂取し、〝和魂洋才〟と比喩されるように、日本の洋画として確立してきた苦闘の歩みであったともいえます。
当館の日本近代洋画コレクションは、勿論その思想、方法はそれぞれ全く異なりますが、見事に日本の洋画を構築した作家たちが顔を揃えています。
本展では、日本近代洋画のアカデミズムの支柱であった藤島武二の『裸婦』、たっぷりとした描線に装飾性を加味した安井曽太郎の大正期の代表作『黒き髪の 女』、東郷青児の耽美派的象徴主義絵画『モンパルナスの女』、知と情の見事な調和世界が描かれている岡鹿之助の『館』、卓越した描写力で気品ある人物画を 描いた小磯良平の『婦人像』、豊潤な色彩と確かな造形力が感じられる田村孝之介『ベネチア風景』、静かな迫力を湛える須田剋太の『カブト梅』を展示し、各 作家の熱き思いをご鑑賞いただきます。
新しき日本画を求めて
明治後期の東京、京都で前後して日本画の革新が、多くの画家により追求されました。このような取り組みは、常に画家による伝統や革新への自問自答、試行錯誤の繰り返しでもありました。
さて、当館の現代日本画コレクションを通覧してみると、先ず、気品ある画風の小倉遊亀の晩年の作品『古つぼと花』、山本丘人の抒情的な作品『水無月山水』、優艶な牡丹を得意とした山本大慈の作品が光彩を放っています。
つづいて、髙山辰雄の『二日の月』『朝の光の中に』は、私たち見る者が静寂のなかに引き込まれる魅力を有しており、石本正の描く裸婦像『夢のあとに』には、特異な感触の色感が艶のある世界を創出しており魅惑されます。
また、加山又造『雪ノ渓』に見られる古画の装飾性を近代化した独創的な作品も魅力の一つであります。さらに、上村淳之の伝統に立脚しながら新しい花鳥画の展開がみられる作品も所蔵しております。
このように当館の日本画コレクションは、日本の四季や自然、花鳥や人物などを個性あふれる視線から捉え、多彩な表現を繰り広げている作家たちの作品群が小粒ながら揃っております。
版画にみるエコール・ド・パリ
エ コール・ド・パリは、1925年頃から当時パリで暮らし制作活動をおこなっていた国外の芸術家たちの呼称として使用され、なかでも、ピカソ、モディリ アーニ、スーチン、キスリング、フジタ(藤田嗣治)、シャガール、ユトリロ、ローランサンなどの一群の画家たちを指します。
彼らの画風に共通性はなく、それぞれが個性的でどことなく哀感を帯び、各々の故国の体質が見え隠れし、祖国喪失者的雰囲気を共有しています。その意味では、ユトリロやローランサンはフランス人ではありますが、エコール・ド・パリの一員とされることもあります。
フランスの近代彫刻
「19世紀における彫刻は、真に絶望的な様相を呈していた。そこに、ロダンがあらわれた。彼の出現とともに、時代はまさに一変したのだ」
これは、〝現代彫刻の父〟といわれているブランクーシ(1876-1957)の言葉です。この言葉のように、ロダンはギリシアの古典古代の彫刻の意味を 理解し、再び彫刻に生命を与え、彫刻を造形の本道に導き入れました。 そのロダンのもたらしたメッセージを受け継ぎ、それを超えようとしたのがブールデル であり、彼はロダンのモデリング(肉づけ)を深く学んでいます。当館では、19世紀の後半から20世紀にかけて活躍したロダン、ブールデル、そしてルノ ワールなどの彫刻作品も有しております。
会期 | 2009/09/08(火) ~ 2009/11/08(日) |
---|---|
その他 | 開館記念展は前期・後期日程に分けて開催します。 前期:2009年 7月7日(火) ~ 2009年 9月6日(日) 後期:2009年 9月8日(火) ~ 2009年11月8日(日) |