あるがままに生きた画家 タカハシノブオ 叫ぶ原色・ものがたる黒
戦後復興の熱気を帯びた1950年代から、高度経済成長期にある神戸の繁華街の路上の片隅で、一心不乱に絵を描く男がいました。男は地べたに座り込み、ときには寝そべりながら、周囲の視線を後目にぎらぎらした眼で対象をぎっと睨み付け、勢いよく画面を仕上げていきます。力強く散りばめられた赤、青、黄の原色。そして全体を印象づけるのは、深くどこまでも呑み込まれてしまいそうな黒。この男の中に渦巻く絵画への欲望、社会への正義感、そして、孤独の中で生きる叫びを剝き出しに、画面の中へ己自身を表現しています。男の名は、あるがままに生きた画家・タカハシノブオ。
タカハシノブオ【本名:高橋信夫】は、1914年徳島県に生まれます。戦前神戸で育ち、船員として働きながら、洋画家・今井朝路に師事し画家を志すも、先の戦争が人生を変えてしまいます。中国とフィリピンの二度に亘る従軍と、妻の急逝。焦土となった戦後の神戸で幼い娘と生きる道を模索するも、生活苦の末の離別。仕事は神戸港で日雇いの苛酷な重労働。戦後の激動の時代は、タカハシの精神、肉体ともに揺さぶりました。しかし、生きる証を求め、再び絵筆をにぎります。『自分の絵の中にしか自分は存在しない』とは、タカハシの言葉です。そして同時に酒を好むようになります。やがてそれは「画家・タカハシノブオ」の生き方に大きな影を落とすこととなり、極貧生活を余儀なくされる中、むさぼるような生への餓え、愛し愛されることへの餓え、認められない自分の絵(信念)に対する餓えを、満たさ
れない寂しさを、深酒によって癒し、雄叫びのごとく画布にぶつけつづけ、独特の画風を確立させます。
タカハシは最期を明石の老人ホームで迎えます。1994年5月8日、80歳でした。底辺の生活をつづけ、世間からも画壇からも孤立してもなお、人間としての尊厳を貶めることなく、こよなく人を愛し、神戸の街を愛し、激情的な絵画と詩を残したタカハシ。その作品群は、今なお色褪せることなく、確固たる存在感を有し、異色の光彩を放ちながら、私たちを惹きつけます。
本展では、神戸わたくし美術館館長・三浦徹氏のご協力を得て、1950年代から1990年代の油彩画とクレパス画を中心に、タカハシの半生に亘る画業の軌跡をご覧いただきます。没後20年たった今、神戸を塒としたタカハシの絵画と詩を改めて見つめ直し、稀有な作家を偲びます。
会期 | 2014/09/23(火) ~ 2014/11/24(月) |
---|---|
開場時間・休館日 | 時間:午前10時~午後6時(入館は5時30分まで) 休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、11月8日(土)はイベント開催のため、11時30分~14時30分は閉館 |
入館料 | 一般400(320)円/大学生以下無料 (65歳以上の方、障がいのある方とその付添の方1名は半額 ※()内は20名以上の団体料金) ※11月3日(月・祝)は関西文化の日のため入館無料 |
開催者 | 主催:BBプラザ美術館、株式会社シマブンコーポレーション 協力:神戸わたくし美術館 後援:神戸市、神戸市教育委員会、朝日新聞神戸総局、神戸新聞社、産経新聞社、日本経済新聞社神戸 支社、毎日新聞神戸支局、読売新聞神戸総局、サンテレビジョン、ラジオ関西 |
関連プログラム・ イベント |
対談「タカハシノブオの人と芸術」 出演:三浦徹氏(神戸わたくし美術館館長)×榎 忠氏(彫刻家)司会:坂上義太郎(BBプラザ美術館顧問) 日時:2014年10月18日(土)15:00~ 場所:BBプラザ2F 美術館前アトリウム 聴講料:無料 (展覧会をご覧の方は別途入館料が必要です) 定員:80名 お問合せ:BBプラザ美術館 078-802-9286 |
その他 | BBプラザ10周年記念イベント 「稲葉瑠奈ピアノコンサート ―絵画とともに味わうピアノとフルート―」 ゲスト出演:河本朋美氏(フルート) 日時:2014年11月8日(土) 13時~14時(開場12時30分) 場所:BBプラザ美術館展示室 入場料:1,000円(展覧会観覧料含む) ※未就学児のご入場不可 定員:100名(予約制・自由席) ご予約・お問合せ:BBプラザ管理事務所 078-802-9311 |