展示案内

新収蔵品展「―唐代の詩と多重都市の協演―高山辰雄・西村元三朗」

新収蔵品展として、髙山辰雄のリトグラフ(石版画)と西村元三朗の油彩画を中心にご紹介いたします。
日本画家・髙山辰雄(1912-2007年 大分県大分市生まれ)の版画制作は、1968年のリトグラフ連作《唐詩選》から始まりました。髙山は唐詩選の研究に2年、版の構想に2年と、約4年の歳月 を費やし、杜甫や李白らの詩から成る12篇について、画と書一対で完成させています。なお、刷り師には、女屋勘左衛門、木村希八、吉原英雄といった人たち が加わっています。
リトグラフと日本画の違いは、描画が反転されることや、色版の場合は色と版数を考え合わせる必要があること、また下絵と完成作品の間にプレス機で刷る作業を介在することが挙げられます。
髙山は56歳であった制作当時、リトグラフという未経験の表現方法を持つことによって、それまでの日本画と自身の関係を振り返り、「リトグラフと私の問題は、日本画と私の問題、そして私と心の間柄の問題でもあるのです」*と述べています。
瑞々しく透明感溢れる色面と、ゆったりとした描線による画面には、版画を余技と考えず、真摯に取り組んだ髙山の新たなる創作の成果が滲み出ており、みる者を悠揚たる唐詩の世界へといざないます。
一方、西村元三朗(1917-2002年 兵庫県神戸市生まれ)は、1939年からの従軍中に画家となる決意を固め、除隊後の1942年より生涯の師と仰 ぐこととなる洋画家・小磯良平に師事しました。1944年に日本大学専門部芸術科を卒業した後は、新制作派協会(現新制作協会)の展覧会を主たる発表の場 として活躍し、制作活動の傍ら、幼稚園や大学等で美術教育にも携わりました。
西村は、幼少時より船や建築、道路などの構築物に美を見出しており、後年の作画の主題としています。当初の叙情的な心象風景から、次第に構築的な幾何学的 構成の抽象表現へと移行し、自己の世界観としての多重都市を追求しつづけました。恐らくは1960年代以降に高度経済成長を遂げていく神戸の急速な都市変 貌の光景も、少なからず彼の制作に影響を与えたのではないでしょうか。
本展では、1940年代~70年代に描かれた油彩画とエスキースなどをご紹介し、近未来的でありながら郷愁を讃えた西村作品の変遷をご覧いただきます。
今年7月7日に開館3周年を迎えるBBプラザ美術館の新しいコレクションより、唐代の詩と多重都市の協演による両作家の世界観をお楽しみください。
*「髙山辰雄 唐詩選リトグラフ集」 明治書房 1968年

会期 2012/04/24(火) ~ 2012/07/07(土)
開場時間・休館日 開館時間:午前10時~午後6時(入館は5時30分まで)
※5月20日はコンサート開催のため、12時~15時半迄は作品を観覧いただけません
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
入館料 一般300(240)円/高・大学生200(160)円/小・中学生100(80)円
(65歳以上の方・障がいのある方とその付添いの方1名は半額 ※( )内は20名以上の団体料金)
※7月7日は開館記念日のため、入館無料
開催者 主催:BBプラザ美術館、株式会社シマブンコーポレーション
後援:朝日新聞神戸総局、神戸新聞社、産経新聞社、日本経済新聞社神戸支社、読売新聞神戸総局、毎日新聞社、サンテレビジョン、株式会社ラジオ関西
関連プログラム・
イベント

ミュージアムコンサートvol.3 -新収蔵品展に寄せて-

佐野えり子ピアノコンサート<音の情景> ドビュッシーの描いた光、水、風…
日時:2012年5月20日(日) 開演14:00 (開場13:30)
会場:BBプラザ美術館展示室
入場料:1,000円(観覧料含む)
定員100名 予約制 未就学児童の入場不可
ご予約・お問い合わせ:BBプラザ美術館 Tel:078-802-9286
*当日12時~13時半迄は準備のため、作品の観覧ができませんのでご了承ください。
主催:BBプラザ美術館、株式会社シマブンコーポレーション
協力:アート&ミュージック高砂21

■ 同時開催
小企画展「兵庫ゆかりの具体美術協会の人たち」
2012年4月24日(火)~7月7日(土)
寄託作品を中心に、具体美術協会で活躍した作家たちの小品をご紹介いたします。
-上前智祐・嶋本昭三・白髪一雄・鷲見康夫・堀尾貞治・松谷武判・村上三郎・元永定正-